医療分野においてソフトウェアを単体で医療機器として承認し販売する「SaMD(Software as a Medical Device)」市場は、世界的に急成長しています。当社は、ある製薬企業からの依頼で、海外の有望なSaMDスタートアップ企業の買収案件について、成果報酬型の事業性評価プログラムを提供しました。今回はその実際の取り組みをご紹介します。
クライアントの課題と背景
クライアント企業は新規事業拡大を目指しており、特にデジタル医療分野への参入を戦略的に検討していました。対象となるスタートアップ企業は先進的な医療ソフトウェア技術を持っていましたが、SaMDという新しい分野のため、市場規模や競合状況、収益性、規制リスクについて経営層が判断材料を十分に持っていませんでした。特に取締役会からは客観的な評価と明確な根拠に基づく判断が求められていました。
当社が提供した成果物
当社が成果報酬型で提供した事業性評価レポートは以下の内容を網羅したものでした。
1. 市場規模分析(TAM/SAM/SOM)
グローバルな市場調査機関の最新データや公的統計に基づき、SaMD市場のTAM(総市場規模)を2033年には約50億ドル規模に達する成長市場として定量的に示しました。また、具体的なサービス可能市場(SAM)や、クライアントが実際に獲得可能な市場規模(SOM)を示し、収益ポテンシャルを明確化しました。
2. 競争環境分析とポジショニングマップ
世界の主要競合企業やスタートアップの動向を調査・整理し、ポジショニングマップを作成しました。特に、すでに巨額の資金調達を行い市場を牽引している海外企業と比較し、対象企業の技術的差別化ポイントや競争優位性を可視化しました。
3. 事業モデルと詳細な財務試算(NPV/IRR分析)
対象企業の財務データや事業計画を基に、5年間の収益予測モデルを作成。複数のシナリオ(保守、ベース、楽観)で詳細なNPV(正味現在価値)およびIRR(内部収益率)の試算を行い、投資回収可能性を明確にしました。ベースケースでIRRが15%以上となることを示し、資本コストを十分に上回る投資効果を明確に示しました。
4. 規制・償還・技術リスク評価
米国FDAやEU規制、国内PMDAなど地域ごとの規制状況とリスクを精査しました。対象企業の製品はすでに米国でFDA承認を取得済みであり、規制リスクが比較的低いことや、保険償還制度の整備状況についても評価し、事業化の実現性が高いことを確認しました。また、セキュリティやデータ管理体制における技術的リスクについても分析しました。
5. 結論と提言
上記分析を総合して、対象企業の買収に関する具体的な意思決定を推奨する提言を記載しました。特に、本買収が経営戦略上有意義であること、現実的なリスク範囲で十分な投資効果が見込めることを示し、取締役会のGo判断を強く支援しました。
導入後の結果
当社のレポート提出後、クライアントの取締役会では、当該案件についての議論が行われました。当社が提供した客観的かつ包括的な評価資料により、買収の妥当性が明確に理解され、取締役会は買収の承認を決定しました。
また、詳細な財務試算や市場分析が投資家や金融機関に対する説明資料として活用され、買収資金の調達もスムーズに進みました。その結果、短期間での買収実行が可能となり、クライアント企業は迅速に事業統合を開始することができました。
クライアントからは、戦略的意思決定に結びついた要因として、当社が提供した成果物の「客観的な専門的分析」、「初期費用を抑えた導入容易性」、「投資リスクとリターンを定量的に明確化する評価手法」などの点をご評価頂きました。
MedTech領域における新たな事業機会の評価やM&Aを検討中の企業様は、ぜひ当社の成果報酬型プログラムをご活用ください。