院内キーパーソン調査:意思決定プロセスの可視化による適切なアプローチ

高額医療機器導入促進においては、病院の意思決定プロセスが複雑であり、臨床と経営の両面で多くのステークホルダーが絡みます。そのため、導入を成功させるためには病院内での意思決定プロセスを明確化し、主要なキーパーソンを特定して適切にアプローチすることが極めて重要です。


病院における医療機器導入意思決定プロセスの概観

病院で高額医療機器を導入する際には、院内の委員会審議から予算化、そして最終決裁に至るまで段階的なプロセスを経ます。具体的な流れとしては、まず機器を必要とする診療科から院内の機器購入委員会へ導入提案がなされます。委員会では「なぜ今その機器が必要か」「なぜそのグレードの装置でなければならないのか」といった根拠が厳しく問われ、院内の他案件との優先順位づけが行われます。委員会で承認を得た後、事務部門と詳細を詰めて幹部会(病院経営会議)で予算承認が求められ、予算が承認されれば具体的な機種選定・購入手続きへと進みます。このように、高額機器の導入には段階ごとの承認プロセスが存在し、各段階で関係者の合意形成が必要です。

意思決定に関与する主要ステークホルダーとその役割・権限

高額医療機器の導入意思決定には、多職種にわたる主要ステークホルダーが関与します。それぞれの立場で役割や権限が異なるため、誰がキーパーソンとなり得るかを理解しておくことが重要です。主なステークホルダーとその役割は以下のとおりです。
診療科部長:新規機器を最も必要とする当事者です。臨床上の必要性を訴求し、導入提案の旗振り役となります。
臨床工学技士長・医療エンジニア(CE/ME):医療機器の専門家として、技術的な評価と安全性・経済性の検討を担います。
事務長・経営企画担当者(事務部門の責任者):病院経営の視点から予算確保や費用対効果の検証を行います。
経営層(院長・理事長など):最終決裁者として組織全体の視点から判断します。
以上のほか、機器の種類によっては看護部門(手術室看護師長など)や他部門の管理職も承認プロセスに関わることがあります。

キーパーソンの特定に向けた情報収集・ヒアリング手法

適切なキーパーソンを特定するには、公開情報と直接ヒアリングの双方から病院の内情を調査することが有効です。以下に具体的な情報収集手法を挙げます。
診療実績データの分析:病院が扱っている診療内容や件数のデータから、その病院のニーズを推測します。
院内組織図・人事情報の収集:病院の公式ウェブサイトや年報から、診療科長や部門長などの役職者リストを把握します。
診療報酬加算届出状況の確認:各病院が取得している診療報酬の加算や施設基準の届出情報を調べることで、その病院が提供可能な医療サービスの範囲がわかります。
院内外のヒアリング:直接病院関係者にヒアリングするのも有力な手段です。
委員会議事録・自治体資料の調査:公立病院の場合、議会資料や法人の理事会議事録が公開されていることがあります。

尚、調査にあたっては、個人情報保護法を遵守した厳格な管理体制で行い、顧客データベースへの登録・更新も細かくルール化し、正確性を常に保つ必要があります。

事例:循環器内科領域・血管撮影装置メーカー

当社が実際に実施した院内キーパーソン調査の成果事例をご紹介します。
▷ 対象:関東圏A総合病院(600床規模)
同病院は、心臓領域で年間800件を超える症例を抱え、最新の血管撮影装置(約3.5億円)の導入を検討していましたが、院内の意思決定プロセスが複雑で停滞していました。
▷ 具体的成果物
意思決定プロセスマップ:委員会から最終決裁に至るまでのフローを視覚的に整理。
キーパーソンプロフィールリスト:診療科部長、臨床工学技士長、事務長、経営層の役割と影響力、推進派か慎重派かのポジショニングを明示。
▷ 結果
提案からわずか4ヶ月で委員会承認、6ヶ月で経営会議の決裁を得て迅速な導入を実現しました。導入後は、症例数が25%増加、関連収益は前年度比約1.4倍と予測通りの成果を挙げています。

以上のように、病院ごとに意思決定構造を明確にマッピングし、主要ステークホルダー(診療科部長、臨床工学技士長、事務長、院長・理事長等)の役割や権限を具体的に特定する調査の最大のメリットは、病院の意思決定プロセスが明確化されることにより、提案の成功率が大幅に向上することです。

最速で成果が見えるソリューションにご興味のある方は、成果報酬型プログラムをご覧ください。

関連記事