手術支援ロボット市場の動向を読み解く ー 術式別症例数から見える未来
近年急速に普及が進むロボット支援手術(RAS: Robot-Assisted Surgery)の市場動向は非常に注目を集めています。本記事では、厚生労働省のNDBオープンデータ(National Database)直近版(2024年度5月発表)を基に、日本国内におけるロボット支援手術に関する症例数を分析し、今後の市場に関する示唆を提供します。
ロボット支援手術の総数と浸透率
ロボット支援手術の普及状況を把握する上で重要なのが、従来の開放手術および鏡視下手術(腹腔鏡手術など)との比較です。2024年5月に発表されたNDBオープンデータ(対象期間:2022年4月~2023年3月)によると、「内視鏡手術用支援機器を用いるもの」の術式の症例数は約71,000件で、代替し得る解放手術と鏡視下手術を合わせると約420,000件と推定されます。この場合のロボット支援手術の浸透率は約17%となります。2018年の保険適用拡大を機に各領域でロボット支援下手術が本格導入され、症例数が急速に拡大してきています。2022年度の状況を鑑みると、本年2025年度においては更に大きく普及が進んでいると推測されます。尚、次のNDBオープンデータは、向こう数ヶ月以内に2023年度分が発表される予定となっています。

診療科別の主な症例とRAS浸透率
泌尿器科領域ではロボット手術の占有率が極めて高く、前立腺摘除術では83%がロボット支援下で行われています。腎部分切除または腎摘除術でもロボットが約3割を占め、膀胱全摘除術では約半数がロボット化されています。他の領域のRAS浸透率は、婦人科の子宮良性および子宮悪性ともに約10%、消化器外科領域では、胃がんに対する胃切除術は約15%、大腸がん領域の直腸手術(低位前方切除術等)は約23%、呼吸器外科の肺葉切除術約10%・縦隔手術(胸腺腫瘍摘出など)約28%となっています。
上記の結果より、泌尿器科(前立腺・腎・膀胱)、消化器外科(直腸)、呼吸器外科(縦隔・胸腺)でロボット手術の普及が顕著であり、前立腺癌手術ではすでにロボットが標準術式となっていることが分かります。一方、婦人科(子宮)・消化器外科(直腸)・呼吸器外科(肺)では従来手術の比率が高く、ロボット化の余地が残されています。

関連症例数規模とRAS浸透率の予測
日本国内のRAS市場を様々な角度から分析し、「保険適用のロボット支援手術、および代替し得る開放手術と鏡視下手術の症例数の総和」と「RAS浸透率」の将来推移を当社独自に計算したところ、2026年度で560,000件に対しRAS浸透率は約3割に達し、2030年度は700,000件に対しRAS浸透率は過半数を超えるという結果を得ました。これらの結果はあくまでも現時点での予測値ではありますが、国内における。関連症例数規模が拡大しつつ、RAS浸透率が急速に高まることを示唆しています。
ビジネス戦略におけるデータ活用の重要性
MedTech関連企業が市場競争に勝ち抜くためには、最新かつ正確なデータに基づいた戦略策定が不可欠です。当社では、多様な市場情報を精緻に分析し、市場トレンドや医療現場のニーズに最適化された具体的な戦略立案をサポートしています。豊富な経験と専門知識を活かし、お客様のMedTechビジネスを確かな成功へと導きます。
詳細なデータ分析や具体的な戦略策定支援については、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。MedTech分野での成功に向けて、私たちが強力にバックアップいたします。