NDBアップデート Vol.2:国内における手術支援ロボット市場に関する調査分析

― 2023年度NDBオープンデータを基にした最新インサイト ―

2023年度データ公開の意義

厚生労働省「NDBオープンデータ」の2023年度版(集計期間:2023年4月〜2024年3月)が、2025年5月下旬に公表されました。前回(Vol.1)で扱った 2022年度データと比較し、ロボット支援手術(Robot-Assisted Surgery:RAS)の普及スピードと術式ポートフォリオの変化がより鮮明になりました。以下では当社独自のクロス集計・推計結果を交え、市場プレイヤーが着目すべき論点を提示します。

ロボット支援手術の総数と浸透率

今回発表されたNDBオープンデータ(対象期間:2023年4月~2024年3月)によると、「内視鏡手術用支援機器を用いるもの」の術式の症例数は約95,000件で、前年度に比較して約34%増と大きく新調しました。代替し得る解放手術と鏡視下手術を合わせると約466,000件と推定されます。この場合のロボット支援手術の浸透率は約21%となります。開放・鏡視下からロボットへの置換が急速に進んでいます。これまでの進捗状況を鑑みると、本年2025年度においては更に大きく普及が進んでいると推測されます。

診療科別の主な症例とRAS浸透率

泌尿器科領域ではロボット手術の占有率が極めて高く、前立腺摘除術では約91%がロボット支援下で行われています。腎部分切除または腎摘除術でもロボットが約4割を占め、膀胱全摘除術では約半数がロボット化されています。他の領域のRAS浸透率は、婦人科の子宮良性および子宮悪性ともに約13%、消化器外科領域では、胃がんに対する胃切除術は約21%、大腸がん領域の直腸手術(低位前方切除術等)は約29%、呼吸器外科の肺葉切除術約9%・縦隔手術(胸腺腫瘍摘出など)約33%となっています。
全ての領域で大きく伸長しましたが、泌尿器科(前立腺・腎・膀胱)での継続、および消化器外科(直腸)の大幅な伸びが顕著でした。消化器外科(結腸)や泌尿器科または婦人科(仙骨膣固定)などで新しい拡大があったことも特筆すべき点です。

市場規模と浸透率の将来予測

当社モデル(人口動態・術式別成長率・適応拡大シナリオ)では、2026年度で関連術式総数560,000件に対しRAS浸透率は約3割に達し、2030年度は関連術式総数700,000件に対しRAS浸透率は過半数を超えるという予測を前回(Vol.1)で提示しましたが、今回の結果は2023年度の予測値に沿ったものであり、予測モデル自体の信頼性を裏付けるものとなりました。

データドリブン戦略の必然性

NDB公開による網羅的データは、市場プレイヤーが 「術式別・地域別・施設別」 に精緻な戦略を描くうえで不可欠です。Vol.1で示した約17%の浸透率予測は僅か一年で約21%に達し、市場転換点が目前に迫っています。本稿で示したインサイトを踏まえ、関連企業においては、装置投資、製品開発、販売戦略、人材育成のタイムラインを再点検することが肝要と考えられます。

当社はMedTech分野全般において、クライアントの具体課題に即したデータ解析 → 戦略立案 → 実行伴走まで、一気通貫で支援します。ぜひご相談いただきたいと思います。

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