― 2024年度NDBオープンデータを基にした最新インサイト ―
厚生労働省「第11回NDBオープンデータ」が公開され、2024年4月から2025年3月までの診療行為別算定回数を確認できるようになりました。今回の分析では、前回のVol.2で扱った2023年度データに対し、2024年度から新たに対象となったロボット支援手術、およびそれらに代替し得る開放手術・鏡視下手術を追加し、2024年度時点の対象範囲で市場動向を整理しました。
ロボット支援手術の総数と浸透率
2024年度の関連術式算定回数は約491,000件でした。このうち、開放手術は約130,000件、鏡視下手術は約240,000件、ロボット支援手術は約122,000件です。構成比でみると、開放手術が約26%、鏡視下手術が約49%、ロボット支援手術が約25%となりました。同じ対象範囲で2023年度を遡及再集計すると、関連術式算定回数は約480,000件、ロボット支援手術は約9万6,000件でした。これに対し、2024年度は約26,000件の増加です。前年対比では約127%、増加率では約27%増となります。
ロボット支援手術の浸透率は、2023年度の約20%から2024年度の約25%へ上昇しました。関連術式全体の増加率が約2%にとどまる一方で、ロボット支援手術は大きく伸びています。これは、市場全体が単に拡大しているというよりも、開放手術・鏡視下手術からロボット支援手術への置換が進んでいることを示しています。
なお、過去記事と同じ19分類で継続比較した場合、2024年度の関連術式算定回数は約476,000件、ロボット支援手術は約120,000件です。今回の主集計では、2024年度から新たに対象となった術式を含む21分類で集計しているため、過去記事の数値とは範囲が異なります。

術式別に見た2024年度の変化
2024年度にロボット支援手術の増加が大きかった分類は、結腸が約4,900件増、直腸が約3,700件増、肺が約2,900件増、子宮良性が約2,700件増、腎部分切除・腎摘除術が約2,200件増でした。上位5分類だけでロボット支援手術全体の増加の多くを占めており、成長領域が特定の術式に集中していることがわかります。
泌尿器科領域では、前立腺手術のロボット浸透率が約95%に達しており、すでに標準的なアプローチとして定着した領域といえます。膀胱手術や腎盂形成術も約6割、腎部分切除・腎摘除術も約5割まで浸透しており、引き続き高浸透領域です。一方で、今後の成長余地が大きいのは、消化器外科、呼吸器外科、婦人科の一部領域です。直腸では浸透率が約37%まで高まっていますが、結腸はロボット算定回数の増加が大きいにもかかわらず、浸透率は約12%にとどまります。肺もロボット算定回数は約10,000件まで伸びた一方、浸透率は約12%です。子宮良性・子宮悪性もいずれも約17%であり、今後の置換余地が残されています。
2024年度は、肺切除術、弁置換術、直腸手術、腟断端挙上術などで新たなロボット支援手術コードが加わりました。これらの新規コードは令和6年度診療報酬改定に伴うものであり、2024年度データでは原則として約10か月分の算定回数です。そのため、本稿では12か月換算は行っていません。

市場規模と浸透率の今後の見方
Vol.1およびVol.2では、関連術式総数の拡大とRAS浸透率の上昇を見込んだ市場予測を提示しました。今回の2024年度データでは、ロボット支援手術の算定回数が約120,000件を超え、浸透率も約25%に達しました。国内市場は、ロボット支援手術が一部の先行領域にとどまる段階から、複数診療科にまたがって普及が進む段階へ移行していると考えられます。ただし、今後の市場を考えるうえでは、全体の浸透率だけを見るのでは不十分です。前立腺のようにすでに約9割を超える領域では、今後の伸びしろは限定的です。一方で、結腸、肺、子宮良性、胃、肝切除、膵切除などでは、非ロボット手術がまだ多く残っています。つまり、次の成長局面で重要になるのは、「ロボット支援手術全体が伸びているか」ではなく、「どの術式で、どのアプローチから、どの速度で置換が進んでいるか」です。2024年度データは、成長領域がより明確になった一方で、術式ごとに異なる戦略が必要であることを示しています。
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